英語のすゝめ。~飽きずに、深く、楽しく。

英語を読むだけで気持ちが満たされるamuです。 英文読解の楽しさは『発見』にあります。「こう表現したい時は英語でこう表現したらいいのか!」「この英単語にこんな使い方があったのか!」「そもそもこんな英語表現があるのか!」本ブログはそんな『発見』を紹介していきます。 私の記事で楽しい英文読解ができれば幸いです。

Lady Luckって誰? / Chanceで表現する「全くの偶然」/「〜程の偶然ではない」を英訳すると? 《引用:朝日新聞2018年10月3日号より天声人語》

Lady Luckって誰でしょう?
ズバリ、Lady Luckは「幸運の女神」の訳です。
では具体的にLady Luck はどういう風に使われているのでしょうか?

その答えの他に、ある形容詞とChance で「全くの偶然」 と表現する方法Have やwith を使って「〜程の偶然ではない」と表現する方法を紹介していきます。

 

 
0.今回のEnglish Material (英語資料)

今回は朝日新聞2018年10月3日号の天声人語の英訳版から英語表現を紹介していきます。

主な内容は2018年10月上旬にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑教授についてです。
彼は新しいタイプのタンパク質を発見し、そこから画期的ながん治療薬『オプジーボ』を生み出しました。そんな彼の偉業を、書き手はペニシリン誕生のエピソードを引き合いに出しながら執筆しています。

Immunotherapeutic drag [免疫療法薬]のような難解な専門英語が出てくる一方で、Lady Luck を使った洒落た言い回しも登場します。

また、天声人語の日本語版(原文)と英訳版では、書いてある中身の内容は同じですが、文章表現と文の順番が大幅に異なり、英訳版でしか登場しない表現も多く登場します。「英訳版を直訳すると、そのまま全文が元の日本語版の文章になる!」なんてことなく、英訳版の文章に正確に対応する日本語版の文章はむしろ少ないのです。なのでここでは便宜上、日本語訳に関しては、基本的に私が英文を和訳します。

1.幸せを呼ぶ"Lady Luck"

冒頭、生物学者レミングが偶然にもペニシリンに繋がる大発見をするエピソードが書かれています。
そんな冒頭部分の最初の一文目に、英訳版に限って幸運の女神が舞い降りるのです。

One August day in 1928, Lady Luck smiled on the human race.

【1928年8月のある日、幸運の女神が人類に微笑んだ


原文での最初の一文は「人類にとって幸運だったのは〜」。
それが英語版では「幸運の女神が人類に微笑んだ」と変わっています。

「幸運の女神」は英語でLady Luck
Luck は「運」と訳しますが、言外に「良い運」と解釈されます。Good が無くてもLuck 一文字で「幸運」になるのです。

そんなLady Luck を使った言い回しがLady Luck smiles on

上記の文のように誰かに良いことがあった時、
Lady Luck smiled on him.
なんて風に使えます。

洒落た言い回しなので覚えておいて損はありません。

 

2."Chance"を強める"Pure"

次は冒頭部分の締めくくりの文です。 

It meant the discovery of the world’s first antibiotic—penicillin—happened by pure chance.

【それが全くの偶然で起きた世界初の抗生物質ペニシリンの発見だった】

By chance の意味は「偶然・たまたま」。
その強調として使えるのがPure

偶然性を強調したい時は、
By pure chance [全くの偶然で]
と表現してみましょう。

3."Have less to do with chance than"で「〜程の偶然ではない」

 次は本庶教授の功績を一通り書かれた後に続く文です。

 

Although Honjo’s discovery had less to do with chance than in Fleming’s case,

【本庶の発見はフレミングの時ほどの偶然ではないが〜】

原文の「(本庶の発見は)ペニシリンほどの偶然ではないが〜」の部分に該当する英訳です。
ここで取り上げる言い回しはHave less to do with chance than。「〜程の偶然ではない」の意味になります。

学生時代にHave nothing to do with [~と関係がない]やHave something to do with [〜と何かしら関係がある]という表現を習いませんでしたか?

その表現を応用したものが今回の言い回し。

比較級のLess を使い、何かと比較して何かしらとの関係性が薄いことを表しています。

なんの関係性かと言うとChance [運]との関係。

よって、Have less to do with chance than は「〜よりも運が関係してない→ 〜程の偶然ではない」の意味になるのです。

使う際は、人を主語に持っていけない点に注意して下さい。

4.「初期段階」を表す"In its infancy"

最後はこの英文。日本語版では最終段階にある文です。

The history of immunotherapeutic drags is still in its infancy.

【免疫治療薬の歴史は始まったばかりだ


Infancy の第一の意味は「幼少期」
スペルを見ての通り、Infant [幼児]から来ていて、意味を想像しやすい単語です。

そして同時に、Infancy は人の成長以外の物事の「初期」を表す単語でもあります。
実際にそういう意味で使用される際の代表例が、In its infancy [初期段階]
使う際は主語を表すIts を忘れないように注意。

まとめ:日本語訳一覧

★Lady Luck smiles on △△ [幸運の女神が△△に微笑む]⇒[△△に幸せなことが起きる]
★By pure chance [全くの偶然で]
★Have less to do with chance than [〜程の偶然ではない]
★In its infancy [初期段階]