英語のすゝめ。~飽きずに、深く、楽しく。

英語を読むだけで気持ちが満たされるamuです。 英文読解の楽しさは『発見』にあります。「こう表現したい時は英語でこう表現したらいいのか!」「この英単語にこんな使い方があったのか!」「そもそもこんな英語表現があるのか!」本ブログはそんな『発見』を紹介していきます。 私の記事で楽しい英文読解ができれば幸いです。

Take off「急速に人気が出る」/ Few things are more ◇◇ than~「これほど◇◇なことは無い」

「離陸」以外のTake offの使い方を知っていますか?

「これほど◇◇なことは無い」を簡単に表現できる表現を知っていますか?

答えはもう書いちゃいましたが、実際にどう使われているのかを知りたい人が下の目次をクリックして下さい!

 

 

0. 今回の英語資料:朝日新聞2018年10月4日号掲載の天声人語

前回同様、今回も英訳版天声人語からの抜粋です。2018年10月4日号の朝日新聞に掲載されたもので、内容は安倍内閣への批判。内閣改造の度に女性閣僚が減っていることについての批判です。

 

内容が内容なだけに、批判的でキツめな表現が多めです。

1.「期待外れ」を表す"letdown"

The greatest letdown had to do with the number of woman in his Cabinet. 

 【最も残念だったのは女性閣僚の人数だ。】

Letdownは「失望・期待外れ」。Let downで「がっかりさせる」という句動詞でも使えます。

 

今回の天声人語はMy biggest dissappointment with the latest Cabinet reshuffle [最新の内閣改造の件について私が最も落胆したこと]という表現で始まりますが、My biggest dissappointmentとThe greatest letdownは同じ意味。

Great は称賛の意を込めて「素晴らしい・偉大な」と訳されることが多い一方で、軽蔑の意を込めて「大きな・かなりの」と訳されることもあります。

MyではなくTheが使われていることに関しては、「最も落胆したのは○○でもなく◇◇でもなく、女性閣僚の数だ!」という文構造になっているので、強調の意を込めるために本来の用法通りのTheが使われているのでしょう(多分)

ちなみに、Cabinet reshuffleの意味は「内閣改造」。「女性閣僚」の部分は意訳ですが、きちんと英語で書くとFemale ministerになります。

2.「急速に人気が出る」を表す"Take off"

内閣改造の度に女性閣僚の数は減っていき、ついには1人だけの状態になります。このことを追及された安倍首相は以下のように弁明しました。

"A society in which women can participate activity has only just taken off in Japan."

【「日本は女性活躍の社会をスタートしたばかり」】

「スタート」に対応する部分にTake offが使われています。

 

Take offは「(飛行機などが)離陸する」という意味で有名な表現ですが、他にも「急速に人気が出る」という意味でも使われます。

今回の場合のTake offは恐らく、というより十中八九後者の意味。

 

has only just taken off in Japan ⇒日本でただ瞬く間に注目度が上がっただけに過ぎない注目度が上がったばかりなので具体的な社会整備はこれからである

 

このようなニュアンスをTake offに込めているのでしょう。

ちなみに上記の安倍首相のコメントに対して、日本語版では「言い訳」としてしか言われていませんが、英語版ではLame excuse [説得力に欠ける言い訳]と評されています。

日本語版と比べて、書き手の思いの度合いが強くなっていますね。あと何気にLame[説得力のない]も有用な表現です。

3.「責任重大」な"Have oneself to blame"

He has only himself to blame.

【彼(安倍首相)の責任は重大だ。】

Have oneself to blame (for)は一つの定型句です。意味は「(~に関する)責任は△△自身にある」

 

本来、「責任は彼にある」と表したいなら、He is to blame.で十分です。しかし、そこにhimself[彼自身]を加えることで、責任の所在が「彼自身」以外にないことを強調することができます。

つまり、Have oneself to blameは「全ての責任を一手に背負う」を明瞭に表現する定型句なのです。

 

ちなみに、「~は自業自得だ。」と表現したい時も、Have oneself to blameが使えます。

4.あくまで「同等」を表す"Equivalent"

文中、諺の「医者の不養生」が出てきます。この諺について英訳版は以下の通り説明しています。

"Isha no fuyojo" is the Japanese equivalent of the maxim "Physician, heal thyself".

 【「医者の不養生」とは格言の「医者よ、汝自身を癒せ」と同等の意味を持つ日本の言葉です。】

Physician, heal thyself.は「医者の不養生」に相当する格言です。聖書の中に出てくる表現で、現代では使わないThyself(yourselfと同義の古語)が使われています。

 

一方で、Equivalent[同等物]は現代でも使われています。この単語は形容詞として「同価値の・等価の」という意味でも使われる単語です。

一見、中学校レベルの英単語のSame[同じ]と同義語のように見えますが、実はここに気を付けるべきポイントがあります。

それはEquivalent[同等]とSame[同じ]の間で意味の違いがあるという点です。

Sameが表す「同じ」とは、「全く同一」という意味での「同じ」、つまり「=」です。対して、Equivalentが表す「同じ」とは、「同じような」或いは「匹敵する」という意味での「同じ」、つまり「≒」なのです。

「同じ」は「同じ」でも、「=」と「≒」では意味が全く同じじゃありません。使い分けに要注意です。

5."Few things are more ◇◇ than~"で「これほど◇◇なことは無い」

それにしても書き手は安倍首相を手痛く批判しています。

Few things are more distasteful than being lectured pompously by someone

who does not even believe in what he or she preaches. 

【自分が信じてもいないことを訳知り顔に説かれたら、これほどたちの悪いことはない。】

この英文の中で一番有用性が高そうな表現はFew things are more ◇◇ (◇◇-er) than~ [~ほど◇◇なことは無い]

 

今回は◇◇の部分にDistasteful[不愉快な・不道徳な]が使われていますが、例えば代わりにMore excitingやHappierなどを当てはめれば、何かを賞賛する文に早変わりします。

内容問わず使える非常に使い勝手がいい表現です。

まとめ

★Letdown [失望・期待外れ]
☆Cabinet reshuffle [内閣改造]
☆Female minister [女性閣僚]
★Take off [急速に人気が出る]
Lame [説得力のない]
★Have oneself to blame (for) [(~に関する)責任は△△自身にある]〈※「全ての責任を一手に背負う」「自業自得」というニュアンスを持つ。〉
★Equivalent [同等の・同様の] 〈※「全く同一」のSameと異なる。〉
☆"Physician, heal thyself" [医者よ、汝自身を癒せ] 〈※日本の「医者の不養生」と同様の意味を持つ格言〉
★Few things are more ◇◇ (◇◇-er) than~ [~ほど◇◇なことは無い]
☆Distasteful [たちの悪い・不愉快な・不道徳な]