英語のすゝめ。~飽きずに、深く、楽しく。

英語を読むだけで気持ちが満たされるamuです。 英文読解の楽しさは『発見』にあります。「こう表現したい時は英語でこう表現したらいいのか!」「この英単語にこんな使い方があったのか!」「そもそもこんな英語表現があるのか!」本ブログはそんな『発見』を紹介していきます。 私の記事で楽しい英文読解ができれば幸いです。

アハ体験の「アハ」の正体 / Clutch my pearlsって何? / 表現としてのNirvana(ニルヴァーナ)《引用:Tedより「カーラ・ハリス:あなたの出世を手助けしてくれる人を探す方法とは」》

ご存知ですか?「自分の真珠を掴む」(Clutch my pearls)で「ショックを受ける」と表現できることを。そしてその理由を。

また、これらもご存知ですか?アハ体験のAhaが何者なのか、Nirvana の意味は何なのか。

詳しくは下の目次から!

 

 

0.今回のEnglish Material (英語資料)

今回、私はカーラ・ハリス氏によるTed Talkのスピーチから英語表現を紹介していきます。

 


How to find the person who can help you get ahead at work | Carla Harris

 

www.ted.com

カーラ氏はモルガンスタンレー投資銀行でシニア顧客アドバイザーに上り詰めた凄腕のキャリアウーマン。そんな彼女がウォールストリート街で学んだ出世の極意について語っているのが今回のスピーチ。

先述のClutch my pearls やNirvana など、マニアックな表現が多々出てきます。

では、早速紹介していきましょう。

1.「納得感」を表す“Aha”

カーラ氏のスピーチは下の一文から始まります。

 I was spring of 1988 when I had the aha moment.

【1988年の春の出来事です。ハッとする瞬間がありました

Aha moment という表現を聞いたことはありますか?
もしくは茂木健一郎が広めた「アハ体験」を知っていますか?

そうです。Aha moment のアハと「アハ体験(a-ha! experience)」のアハは同じ意味のアハ(Aha)なのです!

Aha の正体は納得を表す間投詞。「分かった!」「なるほど!」と訳される単語です。
ただ形容詞のように使われることもあります。その時のニュアンスは「納得感が伴う・生まれる」


例えばアハ体験。どんな体験かと言うと、瞬間的に「あっ!」と気づく・閃く体験。つまり、強い納得感が伴う体験です。

そして、Aha moment も同じ。

Aha(納得感が生まれる)+ moment(瞬間)=Aha moment(納得感が生まれる瞬間)


よって、Aha moment は「ハッとする瞬間」となるのです!

何か大発見した時は、
I had aha moment!
という風に「アハ」を使ってみましょう!

2.秘密の“Behind closed doors”&お堅い"i.e."

1988年、カーラ氏はウォール街の人事評価会議に参加します。この会議についてカーラ氏は以下のように説明します。

That was the process where they were discussed behind closed doors around a table, i.e. the round table, ~

【この協議は非公開でテーブルを囲んで行われるので、ラウンドテーブルと呼ばれます

Behind closed doors は「非公開・秘密裏に」 という意味の表現。今回の頻出表現で7回登場します。
「閉められたドアの裏で」って何だかコソコソしているイメージありませんか?そのイメージが大切です!

文字だけで情景を思い浮かべやすい表現なので、初見で意味が分かるかもしれません。

一方、i.e. は今回のスピーチでも一回しか登場しない珍しい表現。意味は「言い換えると」で、id estの略。
なんとも英単語っぽくない綴りですが、実は英語ではなくラテン語
ラテン語はかつて中世ヨーロッパで学術言語として使われていましたが、その名残で論文のようなお堅い書物などでラテン語が使われることがあるのです。
日常生活で使う分には少々堅すぎるかもしれません。

3.「実力主義」は英語で?

ラウンドテーブルに参加したカーラ氏は「実力主義」という概念に強い興味を持っていました。
というのも、彼女の周りのどの企業も実力主義を強調していました。

Our culture, our process, is a meritocracy.

【我々の企業文化や人事評価は実力主義に基づいている】

端的に「実力主義」と言いたい時はMeritocracy を使ってみましょう 。
メリトクラシー」とは日本語にもなっている英単語です。

覚えるコツは接尾辞の-cracy
-cracy には「~の支配」という意味が込められています。
そして、Merit (メリット)には「長所」の他に「功績」という意味があります。

これら二つを足し算してみると、
Merit(功績)+-cracy (~の支配)=Meritocracy (功績の支配)

意味がしっくりこない日本語ですが要するに、
「功績が支配する⇒功績が一番偉い⇒功績こそ全て⇒功績主義。つまり実力主義」!

スペルの長い単語をものにする時は、一度分解することをオススメします。 

4.ショックを受けて"Clutch my pearls"

カーラ氏はラウンドテーブルで人事評価の実態を目撃します。当時を振り返り、彼女はこう述懐します。

It was at that moment that I clutched my pearls --

【この瞬間、驚きのあまり心臓が止まるかと思いました

Clutch my pearls。
「自分の真珠を掴む」?どういうこと?

結論から言うと、これは比喩表現。
意味は「(精神的な)衝撃を受ける」

では何故「真珠を掴む」と表現するのか?
その答えのヒントはパール(pearl)。
なんと、この表現のpearl は真珠のネックレスを指しているのです!(pearl が複数形なのもそのため。)

このことを踏まえて分析してみると、こうなります。

ネックレスを掴もうとすると、胸元に手を当てることになる。
⇒胸元に手を当てる時は、大抵気を落ち着かせている時
⇒気を落ち着かせる理由は、何かしら精神的ショックを受けたから

つまり、ショックを受けて胸元に手を置く動作「真珠のネックレスを守る動作」と比喩しているわけです!

5.「何でもアリ」を表す"No holds barred"

スピーチ中盤、カーラ氏がメンター(Mentor)と呼ばれる人達がどういう人達なのか説明するシーンがあります。その最中、なかなかマニアックな表現が登場します。

They're the ones who give you the good, the bad and the ugly in a no-holds-barred way.

【良いことも悪いことも汚い手もあらゆる方法を駆使して教えてくれる存在です】

No-holds-barred。
一際目立っている表現ですが、意味はズバリ「何でもアリ」

「No holds barred」でGoogle検索すると、同名の映画(邦題は『ゴールデンボンバー』)がヒットします。
その内容は筋金入りのプロレスリング映画。そして、No holds barred もレスリングが深く関わっています。

というのも、レスリング競技は原則、絞め技(hold)が禁止(bar)されているのですが、プロレスの世界ではそれら反則規定が無い試合形式が存在するのです。
それこそが「No holds barred (絞め技も一切禁じられていない試合)」

こうした背景があってこそ、今回のようにNo-holds-barred で「何でもアリの・無制限の」と表現することが可能になるのです!
なかなかマニアックな表現ですね!

6.「幸福」を表す"Nirvana"

ラウンドテーブルを経て、カーラ氏は「出世には『スポンサー』となる存在が必要だ」という結論に至ります。

では、どうやって『スポンサー』を得るのか。具体論の前に、カーラ氏はこう述べます。

Well, frankly, nirvana is when someone sees you in an environment and decides, "I'm going to make it happen for you. I'm going to make sure that you are successful."

理想的には誰かがある環境に置かれたあなたを見つけて「あなたのために私がこれをしましょうあなたを確実に成功させます」と決める瞬間です】

この英文の中で群を抜いてマニアックな単語が1つあります。

それはNirvanaニルヴァーナ
仏教用語であり、「涅槃」と訳されます。

しかし、「涅槃」もまたマニアックな言葉です。そのまま「涅槃」と訳しても多くの読者は理解しにくいでしょう。

よって、公式の日本語訳では「理想的には」と訳されています。
そもそも涅槃とは、あらゆる欲望から解放された安らぎの境地であり、仏教の理想。
ざっくり言うと、人間にとって物凄く幸せな状態で、即ち理想郷を指しているのです!

実際、Nirvana「完璧な幸福と平穏が保たれている状態」を表現する場合があると、コリンズ英語辞典に書かれています。

https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/nirvana


このような難解な単語を読み解くのも、英文読解の醍醐味です!

 

7.「出世」を表す"Ascend"

最後に、カーラ氏が最も伝えたい一文を取り上げましょう。

You are not going to ascend in any organization without a sponsor.

【スポンサーがいないとどんな組織でも昇進できません】


「出世」の英語表現といばPromote が有名ですが、Ascend でも表現できます。

注意点は両者の意味が結構違うこと。
Promote が「出世させる」に対してAscend は「出世する」
意味が混同しないように気を付けてください!

個人的には「昇る」というAscend の基本的な意味から連想して、『「組織の中で上り詰める=出世する」がAscend』と覚えるのがコツです!
その方がPromote との区別もし易いでしょう。

まとめ:日本語訳一覧

★Aha moment [ハッとする瞬間]
★Behind the doors [非公開・秘密裏に]
★i.e. [言い換えると]
★Meritocracy [実力主義]
★Clutch my pearls [(胸を押さえる程の)ショックを受ける]
★No-holds-barred [何でもありの・無制限で]
Nirvana [涅槃] 転じて[幸福]
★Ascend [出世する]

実用的な表現もあるので機会があれば是非使ってみて下さい!